写真・映像制作人 水谷充の私的視線

〜「見てきたもの」記録装置 カメラがくれた宝物 〜
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作家の気配
 世田谷美術館で開催中の企画展。これ、いいよ〜すっごく楽しい。連休、行くあてのない方には、ぜひともお勧めしたい。

川上澄生(1895〜1972)
棟方志功が影響を受けたと公言してはばからなかった木版画の作家。

詳しくは、リンク先の世田谷美術館Web Siteをご覧いただくとして、まぁ〜ともかく圧倒される作品数。会期途中で、作品の入れ替えがあったようだから、ざっと見積もっても今の倍はあったようだ。
この作家さんは、学校の教員を続けながら、自宅の小さな工房で、黙々と作品を創っていたようだ。
自前で製本された小冊子や、トランプカード。葉書大の小品から、かなり細かく彫り込まれた少し大きい作品など、様々。時代によって作風の変化もあるのだけれど、ともかく終始一貫して楽しい雰囲気に満ちている。

解説によると、野心もなく画壇での評価などにも無関心で、芸術的な理想などにも囚われず、ひたすら製作に没頭していたようだ。なるほどたしかに、どれもわかりやすい身近な題材が多く、作家自身も楽しんで製作していただろうと感じさせる作品だ。本当にどれも優しさに満ちている。


 家族を養い、日々積み重ねる生活。その中に、しっかりと組み込まれた、本人にとっては、きっと呼吸することと同じように自然な営みとしての作品製作だったのかもしれないね。
力みがまったく感じられなかったもん。多分、そんな感じだったんだろうね。

 ちょっと前に、静嘉堂文庫で天目茶碗を観たときにも感じたんだけど、人の手が入った気配を作品から読み取るのは、かなり楽しい。
木版画なら、彫刻刀の痕や、木目、刷りの際に生ずるちょっとのズレだったり。「うわぁ〜きっとここなんか、刀、行き過ぎちゃったんだろうなぁ〜」とか、なんって言うのか、工房に流れたいたであろう時間や、木屑でむせかえるような空気とか、いろんな連想が頭を巡るのだよ。

 国宝だの重文だのが目白押しの茶道具の世界も、手の温もりという不安定要素が味として随所に見て取れる。静嘉堂文庫美術館が所蔵する”曜変天目茶碗”などは、後の時代に、同じようなものを作ろうといくら試みても叶わない姿をしているのだけど・・・。これとて、その当時はひょっとすると失敗という認識だった可能性もあるでしょ?
目指して出来るもんじゃない、つまり不確定要素によって生み出された偶然の産物。
それが、現代に語り継がれ、国宝として珍重されている大きな要因は、それを「素晴らしい」と評価して大事に受け継いできた所有者達によって作られたステータスだ。

 きっと作家やら職人は、ひたすら自分自身が納得できるものを仕上げようと、技術を磨き、日々精進していたに違いない。現代の情報過多人生とは違い、きっと身近な誰かが「まぁ、素敵じゃないの!」とか言ったりしてね、そんなことが作家にとって励みであり、作り続ける動機だったりする。
まぁ、想像に過ぎないのだけど、展示される作品と対峙していると、あながち間違った想像じゃないって気がしてる。
なんだろう、、、え〜  つまり、あざとさが感じられないって言うか・・・。
潔いんだよね、作品が。

 GFの言葉なんだけど、”お母さんやお婆ちゃんが、感覚的に「素敵ね!」と声を漏らすような作品こそが、受け継がれ残ってゆく作品なのかも” と。
僕も、そう思う。

 作品から連想される、製作者自身の体温。時代の空気。
陶器、彫刻、絵画、版画。もちろん写真にだって、僕はいつもそうした気配を探そうとしている気がする。
例えば写真家・石川直樹のPOLARなんか、好きな本の一つ。僕はこの写真集をめくると、極北の風景写真に感心しているのではなく、そこを歩いた石川氏自身の気配を楽しんでいる節がある。
きっとこの撮影を終え、宿で風呂に浸かったりしたら「うぉぉぉ〜」とか、声を上げてるんだろうなぁ〜とかね。
圧倒される風景、そしてそれをカメラに納めるプロセス。素晴らしさは、プランニングし、実行した作家自身の費やした時間が結実したものだ。もちろん最終アウトプットの結果である作品そのものが素敵でなければ、作家に興味を抱いたりもしないだろう。そう言った意味では、作品そのものは大事で間違いない。ただ、僕の持つ評価軸は、そこから感じ取れる気配に重点があるのかもね。

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